mariage
「事情があって、玲子は三浦の家に引き取られてね。玲子は鮫島さん、あなたとの結婚を望んでる。私は琴乃さんが欲しい。いい加減、琴乃さんを解放してあげてください。こんなに泣いているのに」

…涙目で、俺を見た琴乃。

その顔を見て、俺は酷く胸が痛んだ。

泣かせたいわけじゃない。

琴乃の笑顔が好きなのに。

「…さぁ、その手を離してください。琴乃さんは私と行くんですから」

その時だった。

突然俺の携帯が鳴ったのは。

着信相手は、大路。出るつもりはなかったが、鳴り止まず、琴乃の手を離すまいと強く握りしめ、それに出た。

「…はい…あぁ、…分かった」

少し話して電話を切った。

「…いい加減にしてくださいよ」

千影の言葉に、俺はフッと笑った。

「…いい加減にするのはお前の方だ、千堂」
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