mariage
俺の言葉に、琴乃は面食らった顔をしていた。

無理もない話だが。最初にこの事を言っておけばよかったのかもしれないが、玲子から、琴乃を守る為にはこうするしかなかった。

だが、そのお陰か、琴乃は危害を加えられることも無く、まさか、玲子と千影が兄妹だとは思わなかったが、そちらも、何とかなった事に、この選択は間違いではなかった事になる。

…動揺している千影の元に一本の電話が入る。

それは勿論会社の社長から。

それから数分後、警察と共に、社長がやって来て、俺たちに頭をさげると、その場を去っていった。

その場に取り残される形になった俺たち。

琴乃は未だに放心状態。俺はそれを見て困ったような笑みを浮かべつつ、琴乃を自分の方に向けた。

「…琴乃」
「…どうして」

「…え?」
「どうして言ってくれなかったんですか?」
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