mariage
「…遅くなって悪かったな」

突然後ろからそんな声が聞こえ、体をビクつかせた。

聞きたい事は山ほどあるのに、目の前に座った秀吾に、一言も声が出せない。

緊張してしまっている。

「…飲み物は?」
「お、お任せ、します」

適当なものを頼んだ秀吾は、間もなくして運ばれてきたシャンパンを持ち上げると、私の持ったグラスに軽く当てた。

…何から何まで、絵になってしまうなと、感心してしまう。

「…パンフレットは見たか?」

その言葉に小さく頷いてみせる。

「気に入ったものはあったか?」
「…」

何も言わない私に少し苛立った顔をした秀吾。

「…気に入らないなら、他の物を「いえ!あの…幾つか気に入った物はあったんですけど、その」

「…言いたい事があるならちゃんと言え」

「…えっと、全て、私一人で決めるんですか?」

…あ、また苛立った顔。私は思わず萎縮する。
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