悪いキス

「おい、揺木谷!大丈夫か?」

まい子に近づくとそっと抱き上げて意識を確認するために声をかけた

「……………」

「先生っ!早く救急車呼んで」

「………だ、大丈夫。桑原くん、ちょっと目眩がしただけなの」

教師たちも駆けつけてきて一時キャンプファイヤーは騒然となった

「植村さんが唄い出してから気分が悪くなって…」

「意識はあるみたいね、救急車呼ぼうか?それとも、とりあえず宿舎へ戻る?」

保険医はまい子に様子を伺う

「…だ、大丈夫です。救急車は呼ばなくて大丈夫です」

「じゃあ、宿舎まで歩けるの?」

保険医は聞く

「………………」

「俺が抱いて行きます」

「桑原、大丈夫か?」

担任の教師が聞くが、大航はいともたやすくまい子を抱き抱えて宿舎へと戻って行く

「おいおい、いーのかよ。さっきプロポーズしたばっかりじゃん」

「いいなぁ…あたしもお姫様抱っこされたい」

そんな野次が飛びかうなか平然とまい子を抱きかかえてその場を立ち去った

「たい君…」

そう、わたしには見向きもしないで
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