悪いキス
帰りのバスのなかでもずっと大航のことばかり考えていた
大航の隣りはまい子が座っている
わたしよりも前の席で二人が仲良く座っているのがよく見える
本当に最悪の席にゆりえと座っていた
「それにしても植村ちゃんの歌唱力には脱帽だわあ」
後ろから話かけられた
確か、駿河晴久(するがはるひさ)という男子生徒だ
「…そうかな」
今、そんなことどうでも良かった
「俺、バンド組んでギターやってんだけどいいボーカルいなくてさあ。植村ちゃん、一緒に音楽活動やらない?」
「…えぇ!?そんな急に」
「俺、学祭の音楽コンテストに出たいんだよねー。植村ちゃんももちろんでるだろ?」
「学祭かぁ…合宿終わったらすぐあるね。人前で歌を唄うことは好きだけど…」
「な、な?一緒にやろうぜ!桑ちんにいいとこ見せて惚れ直してやれよ」
「それ、のった!」
…そんな簡単な理由でわたしは駿河晴久の組むバンドでボーカルを務めることとなった