悪いキス
「やっとふたりきりになれたね」
わたしは笑顔でうなずいた
「パン食べる?」
「たい君はもう食べたの?」
そういいながらわたしはトーストをかじる
意地悪なくらいべったりイチゴジャムが塗られている
「あぁ、食べた。…ジャムが口のまわりについてる」
わたしはクスリと笑って期待してしまう
大航との間接キスではなく直接キスを
しかし大航は意地悪なくらい慎重で気付いてないのか、
人差し指でジャムをからめとると自分で舐めとった
わたしが口を尖らせて待っていても知らぬ顔で
「キスは結婚するときにするんだよ」
などと今どき珍しくそんな発言をした