悪いキス
静かにわたしの名を呼ぶ声がする
「琴美…」
わたしの頬に触れるぬくもりが伝わってきて
かすかにそっと唇にふれる感触があった
わたしはまた誰かにキスをうばわれて思わずはっとして瞼を思い切り開けた
「琴美…!目が覚めたのか?」
そこには涙を浮かべた青年の顔があった
「…あんた、誰?わたしの唇をよくも奪ってくれたわね」
「え…琴美?」
青年は戸惑っている
「…だからあんた、誰?」
「琴美、俺が分からないのか?大航だよ、大航…」
わたしは首をかしげてみる
「痛…いたた…」
頭を抱えてまた意識が飛ぼうとするのをわたしは何とか堪えた