悪いキス
「揺木谷さん……」
「わたし、大航くんと付き合ってるの、今日もさっきまで一緒に来てたんだけど途中見失っちゃって」
「桑原くんの彼女なんだ…」
「何よ、そんな顔しないで。彼女だったのは今じゃなくて…」
「昔だよ、中学んときだった」
と、一倫もやってきた
わたしはふたりに背を向けてフェンスを掴んだ
「よく遊んでたの、身体に触れたりして…琴美ちゃんは大航くんともう…」
「まい子、デリカシーない質問はよせ」
「いいじゃん、ちょっとくらい」
二人の会話が風になってわたしの耳を通り過ぎていく
涙が一粒流れたから振り向こうにも振り向けない