悪いキス


再びわたしたちは屋上にたどり着いた

屋上にはいつもと変わりない快適な風が吹いている

ストレートの長いわたしの髪をふわりふわりとなびいて行く

日差しはちょうどよい

「このはさみでネガを切って屋上からばらまこう。そうすりゃもう再生不可能だろ」

紙吹雪のように焦げ茶色のネガが風に舞って飛んで行く

嫌なものはここから吹き飛ばせば良い

「あたしにも貸して」

ゆりえもはさみを大航から渡されると粉々に切ってフェンス越しに投げ捨てる

「ほら、あんたも弔い(とむらい)なさいよ」

そう言って渕上にはさみを渡した

彼もまたズタズタに切り裂いてネガ吹雪を飛ばす

ネガティブな感情とはこれで手を切るかのように宙を舞ってゆく


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