白衣とエプロン 恋は診療時間外に
だから麗華先生は別格として、それはそうと――。

桑野先生は幼稚園の若くて元気なお兄さん先生みたいでフレンドリーだし。

貴志先生は何しろイケメンなので。

にっこり笑うだけで、女性の患者さんからは甘いため息が聞こえてきそう。

本当は、手技が一番うまいのは保坂先生なのに……。

保坂先生の診察って、実は泣く子が少ないのだ。

それは先生の手技のすごさにある。

先生の治療は丁寧でいてとても早いから、患者さんへの負担が少ない。

とくに子どもの患者さんは我慢がきかないので、早く治療を済ませる必要がある。

また、うっかり痛い思いをさせてしまうと次回以降の診察も嫌がられてしまうので注意が必要なのだ。

だから、私としては子どもの患者さんには保坂先生をイチ押ししたいのだけど――。


「清水さん」

本日の診療が終了して待合室の掃除をしていると、保坂先生に声をかけられた。

「これ、いつものですが」

のど飴とノンシュガーのフルーツキャンディ、あとは色とりどりの可愛いラムネ。

先生はそれらの入ったビニール袋を「お願いします」と私に手渡した。

「飴ちゃんですね。いつもありがとうございます」

「何の捻りもなくて申し訳ない」

「とんでもないです。先生の飴ちゃん、とっても助かってるんですよ」


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