白衣とエプロン 恋は診療時間外に
院内の変わり者代表から「変わってる」と言われる私っていったい……。


「損をしているなんて、今まで言われたことがなかったので」

「すみません……」

「謝る必要はない」


先生の口調はとても穏やかで優しかった。


「僕の中では、損をしているという感覚はあまりないんです」

「そうなんですか?」

私からすれば、先生はもっと怒っていいくらいだと思うのに。

腑に落ちないこととか、理不尽に見えることがいっぱいあるのに。

先生の心はダムのように広いのですか?

それとも、こんな言い方失礼だけど驚異の鈍感力とか?

或いは――感覚のスイッチを完全にオフにしているとか……。

痛みさえ感じないように、関心を払わずにすむように。

そう、まるでかつての私のように……。

でも――。


「それに、少なくとも今日は――」

「え?」

「損ではなくて“楽”をした」


先生の表情はいつになく柔らかかった。


「清水さんのおかげです」

「そんな……でも、そう言っていただけると嬉しいです」

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