白衣とエプロン 恋は診療時間外に
それに――私の態度も不愉快だったに違いない。

だって、言うべきことを言わなかったのだから。

スタッフの一員として「患者さんに不誠実な仕事をすべきではない」と。

やんわりとでもきちんと福山さんに意見すべきだったのに。

きっと、保坂先生を不快にさせてしまった。

私は、軽蔑されてしまっただろうか……?


「今日、補助に入ってもらえますか?」

「え?」


先生は私を責めも咎めもしなかった。

うちのクリニックで「補助」というのは診療補助のことをいう。

補助は、診察室の傍らでフレキシブルに動いていろいろな対応をする。

仕事としては、患者さんから預かった書類の整理や、器具の洗浄や補充管理、親御さんが診察中のお子さんのお預かりなどなど。

事務スタッフは受付・会計か補助のどちらかを分担することになっているわけだけど――。

なぜに私にご指名を???


「水曜日はどういうわけか子どもの患者さんが多いので」

「はい」

「清水さんは対応が丁寧なので。ぜひお願いしたい」


保坂先生は笑うでもなく淡々と言った。

先生は私を過大評価していると思う……。
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