白衣とエプロン 恋は診療時間外に
あんまりベッドでする話じゃないなと思った。ちっともロマンチックじゃないし。
でも、こういう時間がひどく愛おしかった。
私の話を熱心に聞いてくれる生真面目な保坂先生。
他愛のない話で、くすくす笑い合って、ほっこりして、くっついて。
オトナの男と女が、だた寄り添って眠るだけ。
そうして癒しと安らぎに包まれながら、私は幾晩かをすごした。
(ああ、今夜はどうしよう)
先生はどう思っているんだろう? そりゃあ、先生だって男の人だし? でも……。
保坂先生って、考えが読めないとこがある。何でもあからさまに顔に出るってタイプじゃないし。
飄々と、淡々と、さらさらと。
肉食か草食かと問われれば、たぶん草食?
麗華先生は保坂先生のことを、押しの弱いヘタレみたいに言っていた。
でも、そういう臆病な感じを、私はとても好きだと思う。
きっと、先生の臆病さは相手を思いやってのことだから。
自分が傷つきたくないとか、そういう気持ちが先に立ってるわけじゃないと思うから。
(私は、どうだろう……)
ありのままの、素直な気持ちは? 先生に伝えたいこと、伝えなきゃいけないこと、いっぱいある――。
お風呂を上がって寝る支度を整えるまで、ずっとずっとそわそわしてた。でも、気持ちは決まっていた。
「先生」
先に寝室へ入っていた先生はやっぱり本を読んでいた。でも、私が来るとおもむろに本を閉じて、ドアを閉めたきり立ったままの私を見つめた。
「なんだろう?」
私はちょっと勇気を出して言った。
「あの、今夜はグレちゃんに遠慮してもらってもいいでしょうか……?」
本当、グレちゃんには申し訳ない。一緒に寝たいと言ったり、遠慮してと言ったり。
でも、先生にどんな言い方をすればいいか困ってしまって。
とりあえず「生理終わりました!」というよりは、ずっとましな伝え方ができた……はず?
それとも「勝負下着できました!」と申告したほうがよかった???
先生の反応はというと――。
(うぅ、やっぱりわからない)
あくまでも平常心。驚くでもなく、怪訝そうにするでもなく。
私をまっすぐにとらえる眼鏡の奥のその瞳は、やっぱり静かで穏やかだった。
「今夜は僕とふたりきりでいいということ?」
「そういう、ことです」
(私、今ちょっと意地になってるかも)
ここで怯んではいけない、みたいな。そういうおかしな気持ちが働いていた。
逃げちゃダメだとか、本懐を遂げるのだとか、なんだかよくわからないおかしな感じ。
「それじゃあ、今夜はふたりで寝ようか」
「は、はい」
でも、こういう時間がひどく愛おしかった。
私の話を熱心に聞いてくれる生真面目な保坂先生。
他愛のない話で、くすくす笑い合って、ほっこりして、くっついて。
オトナの男と女が、だた寄り添って眠るだけ。
そうして癒しと安らぎに包まれながら、私は幾晩かをすごした。
(ああ、今夜はどうしよう)
先生はどう思っているんだろう? そりゃあ、先生だって男の人だし? でも……。
保坂先生って、考えが読めないとこがある。何でもあからさまに顔に出るってタイプじゃないし。
飄々と、淡々と、さらさらと。
肉食か草食かと問われれば、たぶん草食?
麗華先生は保坂先生のことを、押しの弱いヘタレみたいに言っていた。
でも、そういう臆病な感じを、私はとても好きだと思う。
きっと、先生の臆病さは相手を思いやってのことだから。
自分が傷つきたくないとか、そういう気持ちが先に立ってるわけじゃないと思うから。
(私は、どうだろう……)
ありのままの、素直な気持ちは? 先生に伝えたいこと、伝えなきゃいけないこと、いっぱいある――。
お風呂を上がって寝る支度を整えるまで、ずっとずっとそわそわしてた。でも、気持ちは決まっていた。
「先生」
先に寝室へ入っていた先生はやっぱり本を読んでいた。でも、私が来るとおもむろに本を閉じて、ドアを閉めたきり立ったままの私を見つめた。
「なんだろう?」
私はちょっと勇気を出して言った。
「あの、今夜はグレちゃんに遠慮してもらってもいいでしょうか……?」
本当、グレちゃんには申し訳ない。一緒に寝たいと言ったり、遠慮してと言ったり。
でも、先生にどんな言い方をすればいいか困ってしまって。
とりあえず「生理終わりました!」というよりは、ずっとましな伝え方ができた……はず?
それとも「勝負下着できました!」と申告したほうがよかった???
先生の反応はというと――。
(うぅ、やっぱりわからない)
あくまでも平常心。驚くでもなく、怪訝そうにするでもなく。
私をまっすぐにとらえる眼鏡の奥のその瞳は、やっぱり静かで穏やかだった。
「今夜は僕とふたりきりでいいということ?」
「そういう、ことです」
(私、今ちょっと意地になってるかも)
ここで怯んではいけない、みたいな。そういうおかしな気持ちが働いていた。
逃げちゃダメだとか、本懐を遂げるのだとか、なんだかよくわからないおかしな感じ。
「それじゃあ、今夜はふたりで寝ようか」
「は、はい」