白衣とエプロン 恋は診療時間外に
先生はただ穏やかに丁寧に説明をする。

場合によっては、「ちょっと痛いかも」と隠さず言う。

そうして、治療に協力して欲しいとお願いをする。

とても対等な目線で、誠実に。

もちろん、子どもというのは一筋縄ではいかないものだ。

でも、最初はごねていた子どもたちも最終的には懐柔されてしまうのだから。

保坂先生って、とっても不思議。

「はい、おしまいです」

「おれ、イタくなかった……あんまり」

ほら、この患者さんも治療が無事に終わったようだ。

「ありがとう。拓(たく)くんのおかげで安全に治療ができました。助かりました」

上からでも下からでもなく、まっすぐに向けられる患者さんへの眼差し。

保坂先生は子どもに対して「えらいぞ!」とか「頑張ったね!」みたいな言い方はしない。

子どもをみくびったりもしなければ、子どもに媚びたりもしない。

先生のそういうところ、なんだかとてもいいなと思う。

でも――お母さま方に人気があるのは、桑野先生や貴志先生なんだよね……。

もちろん、一番人気は院長の麗華先生だけど。

麗華先生は年齢不詳の若さと美貌の持ち主で、女性スタッフたちからは陰で“魔性”とささやかれるほど。

でも、すごいのはその美しさだけではない。

診察も迅速かつ丁寧で、患者さんの話しを聞くのがとても上手いのだから。

男女や年代を問わず患者さんからの信頼が厚く、麗華先生の診察を希望する人は多い。

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