花の鎖・蝶の棘
「さて、次はこっちの質問に答えてもらおうか?」
答えて話しが通じるならそうしてる。とは思ったけど、無駄な抵抗は状況を悪くするだけだと理解していた。
私が頷くと、男達は取り囲むようにして腰を下ろした。
ただ一人、斎藤と言う男だけは刀に手をかけたまま出入り口付近で睨みをきかせていたけれど。
「名前は?それからその妙な服装……やっぱり異国の人間か?何故あんな場所で倒れていた。」
彼等も私同様、山ほど聞きたい事があるらしい。私は一つ一つに答えていった。
「名前は花宮果乃、れきとした日本人よ。それにこの服は私のところじゃ普通。皆んな着てるわ。」
「日本人?まあ、原田の言うように確かに顔立ちはそうだな。それで、何であんな場所にいた?」
「それは……」
何て言えばいい?タイムスリップ、時を越えて来たみたいですって?そんな事言ったら間違いなく斬られる。番犬が私の首を狙っているのがヒシヒシと伝わっていた。
「答えられないって事は、何かあるんだよね?それとも、相手が私達“新撰組”だから……かな?」
無垢な笑顔の裏に垣間見える黒い影。総司、恐らく彼は美剣士として有名な沖田総司。
言わずもがな、その迫力、カリスマ性を感じる。
とはいえ、悠長に人間観察をしている場合じゃない。
私は早急にこの難問をクリアしなければならないのだ。
さて、どうするべきか?
何かそれっぽい理由をつけて彼等に取り入る事も出来るかもしれない。だけど……
真っ直ぐ見据えた先にある曇りない紫暗の瞳はその嘘を見抜いてしまうだろう。
それは反対に言えば、真実なら例えどんな話しだろうと信じてくれるかもしれない、期待さえしてしまう強い瞳。
土方……歳三。新撰組副長として歴史に名を残すには申し分のない、そんな雰囲気を持つ彼には口先だけの嘘を言う気にさえならなかった。
私は、ギュッと唇を噛み締めた後決意した。
もう一度、真剣に彼の瞳を真っ直ぐ見据え、本当の事を伝えるためにーー