花の鎖・蝶の棘
この決断は賭けだった。
私が話し終えると、シンと静まり返った。彼等の反応は至極当然のもの。
その沈黙を破るように、土方歳三が口を開いた。
「つまりアレか。酔っ払って目が覚めたら彼処にいて、しかもテメェはその平成とか言う、今から150年先の時代から時を越えて来た……と?」
ああ、他人の口から聞くと余計に情けない。いい大人が何言ってんだか。でも、事実だから仕方ない。
「まあ、そう言う事になりますね。」
「そんな阿保みたいな話しを信じろと?」
「って言うか、女子が記憶なくなるまで酒を飲む事自体私達には考えられないんですけど?」
横槍を入れて来たのは沖田総司。その言い分はごもっともです。
「阿保みたいな話しだけど、私にもそうとしか考えられないし、これ以上説明のしようが……」
後はもう、彼等に信じてもらえるかどうか。世の中そう甘くはないんだろうけど、願うより他ない。
まるで沙汰を待つような気分で俯いたまま答えを待った。
暫くの沈黙の後ーー
「土方さん、オレにはこいつが嘘言ってるようには見えねえよ。それに、悪い奴でもなさそうだし、オレたちに害があるようには思えねえ。」
原田という男が言った。それを聞いた私の気持ちに少しだけ余裕と希望が生まれる。
そして、それに同調するように沖田総司も続けた。
「まあ、確かに害はなさそうだよね。土方さんいいんじゃないですか?見逃してあげても。」
「あー、まあ、お前らがそこまで言うなら大丈夫とは思うが。花宮って言ったな?いいだろう。お前の話しを信用してやる。引き止めちまって悪かったな。もう行っていいぞ。」
途端に用が無くなったのか、シッシと野良犬を追い払うような仕草であっさり釈放の身になってしまった。