花の鎖・蝶の棘
幕末クッキング
「とりあえず、良かったな。後は土方さんが上手くやってくれるから安心しな?」
あの後、物凄く嫌な顔をしながら土方さん(そう呼んでもいいって許可済み)は部屋を出て行ってしまった。
何でも、私を此処に置いても良いか家主さんと新撰組の局長に話しをつけに行ってくれたらしい。
「とりあえず、一緒に住む事になるわけだ。ちゃんと名乗っとかねえとな?オレは原田左之助。十番組の組長だ。よろしくな、果乃。」
「えーと、原田さん?よろしくお願いします。」
「左之でいいって。」
最初からそうだったけど、この人は優しいと思う。うちの会社にいたらいい上司になりそうね。ちょっと甘いかもしれないけど。
「……って、仕事!ど、どうしよう。完全に忘れてたけどこのままじゃ首になっちゃう。どう考えても元の時代に戻れなかったら無断欠勤……ありえない。」
今更気付いたところでどうしようもないかもしれないけど。
慌てふためく私を他所にケラケラと笑い声が聞こえて来た。沖田総司だ。
「大丈夫だよ。その君がいた時代とやらに戻れる保証なんてないでしょ?ずーっと此処で生きていかなきゃならないかもしれないし?考えるだけ無駄だよ。あ、私は沖田総司。一番組の組長だよ。よ、ろ、し、く、果乃さん?」
確かにそう何だけど……何故か彼に言われると納得出来ないと言うかしたくない。
他人事だと思ってへらへらした態度が神経を逆撫でする。
「……よろしくお願いします、沖田さん。」
「あはは。総司でいいよ?だって果乃さん、私より年上でしょ?うーん、多分原田さんと同じくらい、かなぁ……」
「何でそんな事分かるんだよ総司。それにな、女に歳を聞くのは失礼だろ?」
「だって、私達の呼び方に困ってそうだったから。ね?」
……に、苦手だわ。沖田総司。あながち外れてないのがまた腹立たしい。
確かに、彼は私より若いと思う。
私と同じくらいなのは原田左之助と斎藤って男だろう。
相変わらず出入り口で突っ立っている男に視線を移すと、沖田総司がさらに付け加えた。
「ちなみに、彼は斎藤一。三番組の組長だよ。言っておくけど一君は私より二つ下で二十歳。」
「えっ!?」
あんなに威圧的な二十歳なんて見た事ない。
その後、沖田総司……いや、総司は土方さんやまだ会っていない人達の事まで事細かに教えてくれた。