花の鎖・蝶の棘



斎藤一の後ろをついて行くと、空き部屋に通され着替えろと言われた。私は大人しく言われた通り、土方さんが用意してくれた着物に袖を通した。


以前、社員旅行で京都へ行ってから着物にハマった時期があって何とか着る事が出来た。とは言っても、普段着ていたわけじゃないから慣れるまでに時間がかかりそうだ。

着替えて出て行くとまた、彼はさっさと歩き出してしまった。



無愛想、無表情。目つき最悪。っていうか前髪長くて表情が読み取れない。それに凄く無口だ。
今までこう言うタイプの人間を相手にした事ないから困る。




「此処が勝手場だ。」


色々思案しているうちに案内された勝手場。
本当に時代劇とかに出てきそうな造りだ。釜戸も年季入ってる……



何処に何があってどうするか。彼は淡々と説明をこなしていく。それ以外の会話は一切ない。
一通り説明を聞き終えた頃、バタバタと足音が近づいて来るのが分かった。




「はぁじぃめぇくーーん!!!」


屯所中に響き渡るんじゃないかってくらいの男にしては甲高い声が足音と共にどんどんこちらへ向かっている。


ドタバタとやけに元気のいいのが居るわね。




「居たぁっ!総司から聞いたけど行き遅れの女中さんが来たって本当!?」


勝手場に飛び込んで来るなり早口でまくしたてて来たのは随分と若い男だった。
犬の尻尾みたいに高い位置から髪を結んだくりくり目の可愛いらしい少年。



「この女子がそうだ。本日より新撰組の食事を取り仕切る事になっている。」


「花宮果乃です。お世話になります。」


「あー、ども。僕は八番組組長の藤堂平助。可愛いのに行き遅れなんだ?」


ちょっと待て。さっきから聞き捨てならない言葉が聞こえて来るんだけど?

< 16 / 22 >

この作品をシェア

pagetop