花の鎖・蝶の棘
可愛い顔してズケズケ言う子ね。
藤堂平助、確か総司の話しだと斎藤一と同い年……って見えない。どっちも正反対に二十歳には見えない。
「ちょっと、さっきから行き遅れ行き遅れって失礼ね!」
「え、いや、だって総司が……だから言ったじゃん。可愛いのにってさぁ。」
沖田総司……後できっちりお灸据えてやるんだから。
「はぁ。いいわもう。えーと、今日の当番は確かこの二人でいいのよね?じゃあ、さっそく夕餉の支度に取り掛かりたいんだけど。献立は……」
「新撰組の懐事情は決して裕福ではない。従って、食材は質素に無駄なくだ。あんたにそれが出来るのか?それと、土方副長の好物である沢庵は切らすな。あの方のお手を煩わせるような事だけはしてくれるなよ。」
いきなり饒舌になった。この男、どんだけ土方さん好きなわけ?
「言ってくれるわね。そんな事言って、貴方料理出来るの?」
「はじめ君は上手いよ。」
「無論だ。副長のお口に入るものに妥協はしない……」
そう言って持つ包丁は何処までも研さぎ澄まされている。余程自身があるらしい。
今日使う予定の材料を藤堂君が出して来てくれた。
大根と牛蒡、芋、葱、それからメザシ……お米は麦だ。
なんだ。案外使えるじゃない。
「それじゃ、大根の葉はお浸しにして、あとはお味噌汁の具にしましょ。葱もね!牛蒡とお芋は煮物にすればいいし、メザシは焼きで。どう?」
「おー!あっと言う間に決まりじゃん。はじめ君もそれでいいだろ?」
返事の代わりに彼は手が動くらしい。さっそく大根を根と葉の部分に分けていた。