花の鎖・蝶の棘
小気味の良い音が聞こえる。
どんな物かお手並み拝見しようと思っていたんだけど、流石に偉そうな口ぶりだっただけの事はある。
「へぇ、中々上手いものね。」
大根の皮むきも手馴れたものだ。スルスルと仕上げていく。
全てを剥き終えると皮も大量になった。
「ちょっ、ちょっと待って!その大根の皮何処に持っていくつもりよ?」
斎藤一は剥きあがった大量の皮をおもむろに掻き集めると何処かに向かおうとした。
私が慌てて引き止めるともの凄い目つきで睨みをきかせてきた。
「残飯桶に決まっている。」
「はぁ!?冗談じゃないわ。貴方さっき材料は無駄なく使えって言ったわよね?」
そう言いながら彼の手に抱えられた大根の皮を奪いとる。
「そんな事言ったって、それどうするんだよー?」
斎藤一の後ろからぴょこぴょこと顔を覗かせながら藤堂君は不思議そうに私を見た。
「牛蒡もあるし、一緒にきんぴらにするのよ。これで一品増えたし無駄もない!あんな大口叩いたんだからこれ位知ってるのかと思ったけど、まだまだね。」
少し意地悪に聞こえたかしら?顔色は見えないけど、面食らっているのか大根の皮をじっと睨んでいる斎藤一。
それから私達は黙々と夕餉の支度を進めていった。