花の鎖・蝶の棘
調理から配膳までの全ての作業が終わったのは夕餉の時間の少し前。タイミング的に作り手が一息つけるくらいだった。
「す、すっげー!!こんなに種類並んだの初めてだよな!このきんぴらなんて大根の皮使ったとは思えないし。うまそー!」
「まあね。食材は有効に使わなきゃ。これ、何処に運べばいいの?」
「あ、運ばなくていーって。時間になったら隊士達が自分で取りにくるからさ。」
へぇ。意外。てっきり皆んなあぐらかいて待ってたりするのかと思ってたけど、そこはちゃんとしているのね。
それにしても……
さっきから何か不機嫌なのは気のせい?表情には出してないけどこう、ピリピリとした空気が斎藤一の周りを包んでいる。
大根の皮の事、根に持ってるとか?
触らぬ神に祟りなしって言うし、放っておくのが一番かも。
そうこうしているうちに夕餉の時間になったのか、屯所内が賑わって来た。勝手場に近づいて来る足音がいくつか聞こえ始める。
「隊務が終わったみたい。んじゃ、僕達は先に御膳貰って広間に行こうはじめ君。」
「……ああ。」
「じゃあな、果乃ちゃん……でいっか?また後で!」
そう言うと藤堂君と斎藤一は先に御膳を持って勝手場を後にした。
その後、御膳の内容を知った隊士達が一気に詰めかけて来て勝手場は大賑わい。
学生時代の学食の光景を見ているみたいだった。