花の鎖・蝶の棘
状況は相変わらず膠着している。
聞きたい事、知りたい事は山ほどあって 、それと同じくらい一度落ち着いて頭を整理させたいとも思った。
さっきから感じている奇妙な感覚の正体。それを解決するキーワード、フレーズ。
新撰組……土方と呼ばれた男……武士、京の都。
そして、この空間では奇異の存在に置かれている私。
今、自分の置かれている状況を説明するにしては随分と馬鹿げたファンタジックな結論。
“タイムスリップ”
「あ、あの……一つ聞いてもいい?」
それを決定づけるのは恐らくこの質問への答えだ。
声が少しだけ震えた。
美丈夫の眉間に皺が刻まれる。
「何だ?」
「今って“平成27年”ですよね?」
更に深い皺が刻まれていく。
「そのへいせいってのは何だ?今は“元治元年”六月だ。」
目眩がした。
出来る事なら夢であってほしい。頬をつねってはみたけど、痛みが現実だと思い知らせてくれた。
ーーありえない。
酒に酔って階段落ちたらタイムスリップしてました、なんて。
このまま現実逃避したい。
……なんて事は当然、出来るはずもなくて。
次は彼等からの質問、もとい尋問がはじまるのだった。