長い春にさよならを
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翌朝、美晴はいつもの習慣で、目覚ましアラームが鳴る前に目を覚ました。
「ふ……あぁ」
暖かな毛布から両手を出して大きく伸びをした。左側のサイドテーブルでは、デジタル時計の緑の文字が六時二十分を表示している。アラームが鳴るまであと十分ある。
(眠た……)
両手で目をこすろうとして、何か硬いものが左目の下に触れ、ハッと手を止めた。目を凝らして左手に焦点を合わせ、薬指にある見慣れないものを見る。
(え!?)
一瞬にして眠気が吹き飛び、右手を伸ばしてサイドテーブルの上のライトをつけた。淡いオレンジ色の光を浴びて、左手の薬指でプラチナの指輪に抱かれた大粒の石がキラキラと輝いている。
美晴はベッドに起き上がり、右隣で穏やかな寝息を立てている貴幸を見た。
(まさかこれ、私が寝てる間に、貴幸がはめてくれたの……?)
どうしようもなく胸が震えて、涙が込み上げてくる。
(貴幸も私と同じこと、考えてくれてたの!?)