長い春にさよならを
 いたずらを咎められた子どものように、貴幸が小さく笑った。だが、すぐに真顔になって、涙に潤んだ美晴の目を見つめる。

「今まで美晴と一緒にいて、これからも一緒にいたいと思ったんだ。美晴がいてくれたから、卒論だって就活だって仕事だってがんばれた。美晴がいてくれたら、これからもなんだって乗り越えられる。美晴のいない人生なんて考えられない。結婚してほしいんだ」

 彼の言葉も表情も真剣だった。でも、髪には寝癖がついたままだし、頬にはひげも伸び始めている。ロマンチックにはほど遠いけど、それが私たちらしいのかも、と美晴は思った。

「はい」

 そう答えたら、胸の中で幸せが大きく膨らんで、自然と暖かな笑みがこぼれた。


【END】
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