愛を教えてくれたのは若頭
気持ち悪い、
この家を見るたびに吐き気がする
玄関を開けると、鍵はかかっていない
ということは、母親がいるんだ
だからと言って、声を掛けたりしない
靴を脱ぎ、階段を上がり
自分の部屋を目指す
一つのドアを開けようとした時
「荷物、整理してくれる?4月からその部屋、使うから」
リビングにでもいると思っていた母親は
2階の寝室から掃除機を持ち出てきた
荷物を整理すれって事は
私はもう、この家に帰ってくるなという意味だろう
『全部いらない』
そう言って部屋に入る
前回、荷物を取りに来た時と変わらない
クローゼットを開け
ワイシャツとあるだけの服を
カバンへと詰め込む
机の引き出しを開け
ある箱も、鞄へと入れた
あとは捨ててもいい
何もいらない、もう二度と戻らない
悲しい、とかはない
ただ、やっぱり…としか思えない