愛を教えてくれたのは若頭


車に揺られ、私はよっちゃんのマンションへ向かっている
ポストに鍵を入れて帰るだけ
憂鬱だと思うのは
鍵を返しに行くからではない


「あちらのマンションで宜しいですか?」


『は、はい。すみません』



バックミラーでチラッと見られた
鋭い目つきに身体がビクッとする

さっきまで一緒にいた風間さんはいない
相談したいことがある、と
晃さんのお母さんは風間さんを呼び止めた

日を改めて欲しいと風間さんは伝えたが
どうやら難しかったようだ
と、いうか風間さんを取られたく無いと言う私への嫉妬の目だ

もしかしたら晃さんのお母さんは
風間さんの事を…


なんとも複雑な気分だ
まぁいい、それならそれでと
私は風間さんを差し出した

その代わりに、晃さんのお母さん専属の運転手さんが私をマンションまで送ってくれると言い、今に至る


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