愛を教えてくれたのは若頭
私が生まれて、
物心がついた頃には
母と私の二人暮らしだった
母は私を育てるために
昼はお弁当の工場でパート
夜はスナックで働いていた
その間、私は昼間は保育園
夜は一人で母が帰宅する前に
一人で寝ていることが多かった
母はスナックのお客を家に連れてくることも、お付き合いすることもしなかった
私を第一に考えてくれて
私が寂しい思いをするのは
夜、母が働きに出かけ私が寝るまでの数時間程度だ
小さいながら、母に迷惑はかけたくないと、ワガママ言わず生きてきたつもりだった
私が中学生に上がったと、同時に
母は夜の務めを辞め
昼間のパートも辞めた
「茜ももう中学生になったし、ちゃんとした仕事に就くわ」
母は中小企業に就職ができた
そのおかげで土日も休みになり
母と会話する時間も増えた
家に帰れば
おかえり、と出迎えてくれることが
とても嬉しくて、幸せだった