愛を教えてくれたのは若頭
やはりこういう場は緊張してしまう
一呼吸置きたくて
風間さんに断りを入れ
トイレへと行かせてもらった
個室に入り、用を足し
自分に気合を入れる
ドレッサーの前で着物チェックをしていたら、誰かがトイレへ入ってきた
親子だろう
ケバい化粧をした年配の人と
娘だろう、爪が長い人
その二人もドレッサーの前に立ち
なにやら化粧を直していた
「お母さん、見た?堂城の若、今日は一人だったわ!あのチビ、捨てられたのね」
あ、と思い出した
この声はあの時
晃さんをロリコンと呼んだ声だ
「子供だもの、若に似合うはずがないわ」
あー、そうですかと腹の中でため息だ
「今日こそ、若との縁談をこぎつけてもらわないと!よし、これでいい。堂城の若の隣に行かなきゃ!」
最後にシュッ、とスプレーをひと吹きして行ってしまった