愛を教えてくれたのは若頭
聞き耳をたてるが
晃さんから発せられる言葉は
「ああ」「それでいい」「わかった」
そればかりで何を話しているのかわからない
これ以上、聞いても無駄
盗み聞きをしている罪悪感が生まれ
少し開けたドアを閉めようとした
「裕也を頼んだ。血は繋がっていないが茜の弟だ、助けてやってくれ」
晃さん、初めて会ったときから
あなたはどうしてそんなに優しいの?
言葉足らずだから
なかなか理解するのに困った事もある
けど、嫌な顔一つせず
私を助けてくれる
閉めかけたドアを開け背後から近く
晃さんはソファの背もたれに身体を預け
まだ話の続きをしている
既に裕也の話は終わっている
仕事の話なら聞かないほうがいい
わかっているけど
どうにも止まる気持ちは持っていない