愛を教えてくれたのは若頭
やっぱり、そうなるよね
ホテルの一室には私だけ
パタン、としまったドアを見て
ため息が出てしまう
嘘つき、と言ってやりたい
「はい、お金。思った以上に良かったから上乗せしてあげる。その代わり、またお願いしてもいい?」
『ありがとう、おじさん。週1くらいで、あの辺りにいるから声掛けて』
おじさんは私にお金を渡すと
脱ぎ捨てたワイシャツを着始めた
『…帰るの?』
「ああ、家で待ってるんだ」
あー、そうか
銀色に光る輪っか
それは誰かのものですって意味だ
やっぱり帰るんだ
じゃあ、と唇に触れて行ってしまった
ひとりぼっちの部屋は
しーんと、静まり返る
シャワーを浴びて、出よう
別に寝る部屋が欲しいわけじゃない