愛を教えてくれたのは若頭
女の顔
がタン、という音に身体がビクついた
湯川の母親が席を外す
何だろうと思っていたが
すぐに湯川の母親は戻ってきた
けど、一人ではない
今まで見たことがないくらい地味な母だ
「あ、茜っ」
私に駆け寄ろうとしたが
いつの間にか晃さんが私の前に立っていた
「すみません、少し宜しいでしょうか?」
晃さんの声、柔らかく話しかけるが
私には怖いくらい気味が悪い
「あら、貴方…茜の彼氏?いい男ね」
トーンの高くなった母の声
気持ち悪く思える
風間さんが母にも同じように名刺を渡し
湯川の両親に話したように同じく説明をした
そして私の今後の話も…
その間、私は母を直視する事は出来ず
ただずっと出されたお茶を見ていた
チラチラと母の視線が痛い
母もまさか弁護士を連れてくるなんて
思っていなかったのだろう