愛を教えてくれたのは若頭
母の口元が微かに上がる
「だって、愛する人にお願いされたら…誰だって断れないでしょ?」
私より…実の娘より男を取ったわけだ
わかっていたことだが
改めて母の口から聞くと
やはりショック以外、何もない
湯川の両親も初めて知ったのだろう
信じられないようで
母と…私を交互に見てそれが確かだと感じとったようで
湯川の母親は泣き崩れ、湯川の父親はテーブルに肘をつき頭を抱え始めた
泣きたいのは私だ
なんか、もういいやと思ってしまった
『そういうことだから、母とは暮らせません。私の事は死んだと思ってください』
それだけ言って立ち上がろうとしたが
それを阻止したのは晃さん
『…晃さん?』
「まだだ。座っとけ」
まだ、
その言葉にある事を思い出した
そうだ、裕也のことだ