愛を教えてくれたのは若頭
一瞬、湯川の顔が驚いた顔になるが
やはり余裕の湯川
「お前には関係ない、その女をどうしようが俺の勝手だ。…それとも、自分の妹より、その女を取るのか?」
男の拳が握られたのに気がついた
そうだ、
男は妹を助けるために行動したわけで
今、私を庇うという事は
妹を見放す事にもなる
『…大丈夫、私は大丈夫だから。だから早く妹さんの所に行って』
男は驚き振り返る
男を通して立っている湯川は
相変わらず笑っていた
私がこう言うのをわかっていたようだ
もう、どうにもならない
こんな誰も寄りつかないモーテル
諦めるしか、ないんだ
男は私とくくりつけているベルトを外し
私を気にしつつドアへと歩き出した
これでいい、と
男の後ろ姿を見送る
バタンと閉ざされたドアの音で
湯川はゆっくり近づいてきた