愛を教えてくれたのは若頭


誰かと一緒に住むなんて久しぶりだ
鍵を貰ったのも初めてだ


今日は客取りをやめよう
多分、明日か明後日には
月のモノがくるだろう

身体が怠いから。



コインロッカーから荷物を出し
歩いていたら、声をかけられた


「今日、いい?」


…だれ?もしかしたら客かも


『ごめんなさい、今日は無理』


そう言って立ち去ろうとしたが


「何が無理なの?」


その男は私の前に立ちはだかる
何こいつ、と思いながらも
知らないふりをする
客だとハッキリ覚えていない以上
関わると面倒だ


『すみません、急ぐんで』


そう言って、男の横を通り過ぎた
…あれ。
どっかで見たことある
その男のスーツの襟には
社章のピンバッチが付いていた

どこかで見たことあるけど
思い出せない
いいか、と思い
駆け足でその場を離れた


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