愛を教えてくれたのは若頭


ピンポーン



インターホンを押す
カメラに向けて手を振ると
オートロックのドアの施錠が解除された


慣れた手つきで
ポストの中を確認し
郵便物を手に取り、エレベーターへ向かう

目的の部屋は12階にある部屋
玄関ドアを開ければ
コーヒーのいい香りが漂う



「いつも急だな」


カップを持ちながら
キッチンから出てきた男



『よっちゃん、ごめんね』



べつにいいよ、と言って
私から郵便物を取る


「シャワー浴びるの?」


雨のせいで少し濡れた髪
どうしようかと悩みながら
リビングへ向かうと
テーブルの上には書類がばらまかれている


『仕事、忙しいの?』


悪いときに来たかな?と思ったが
そうでもないらしい


後ろから腕を回され
よっちゃんが飲んでいたコーヒー
私の口元へ持ってくる

飲んで、と言われ
少しだけ口に入れた


苦い…
だからコーヒーは嫌い

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