愛を教えてくれたのは若頭


何をしようか…と悩んでいたら
私のスマホが鳴った


『はいはーい』


どうせ、よっちゃんだろうと思った
けど、違った


「茜」


その言葉に凍りつく
もう二度と聞くことがないと
思っていた声

誰に聞いたのか
番号を変えるたびに
必ずかかってくる


「母さんから聞いた、家を出て行くのか?」


父親面をする男に虫唾が走る
さっさと電話を切りたい
けど、うまく身体が動かない


「一度、会おう」


その言葉と同時に
私の手からスマホが奪われた


「茜は二度とお前には会わせない」


画面をタップし
私のスマホをソファへポンと投げた
反対側の腕は私を包み込むように
私の頭を自分の胸へと押し当てた



「誰も見てねえ、泣け」


『…、と…堂、城さん…っ、』


まだ帰宅するには早い時間
どうして帰ってきたの?
聞きたかったけど
口を結び、声を出さないように
堂城さんの胸の中で久しぶりに泣いた

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