愛を教えてくれたのは若頭
いいえ、と下がっていく
その二人を見ていた
「悪いな、茜。俺から離れるな」
引き寄せた私の耳元で
私にしか聞こえないように話す
私に向ける顔は
いつもの優しい顔だ
大丈夫、なんて軽々しく言えない
けど、私は覚悟を決めてきたんだ
『私は晃さんの彼女よ?』
笑って言えば
そうだ、と笑って答えてくれる
そんな私達のやらとりにも
周りがガヤガヤと煩い
「なにあれ、若が笑ってる」
「若があんな顔をするなんて…」
「あの女は何者なの?」
耳に入ってくるのは
決していい言葉ではない
けど、負けてられない
どこからか溢れてくる気持ちに
小さく深呼吸をした
行くぞ、という言葉に
笑顔を向け歩き出した