青に溺れる
予想通り、両親には猛反対された。
抗がん剤治療をやめるだなんて、快く了承してくれるはずがない。

でも俺達はもう迷いなんてなかった。
その夜、俺は透子に言った。

『俺たちのことを誰も知らない場所へ行こう』

そう言うと、透子はすぐに頷いてくれた。
そして俺たちは、この家を出ていくと決めてから3日後の夜に荷物をもって夜光バスに乗った。

3日の間に、俺はすぐに入居のできるアパートを探して借りた。
あまり綺麗な部屋ではないが、海がそばにありすぐ気に入った。

『わあ…素敵!』

思った通り、透子も気に入っていた。
俺は透子の腕を引いて、砂浜を歩く。

『夢みたいだ。透子と二人で暮らせるだなんて』

『私もよ。今が人生で一番幸せ』

これから幸せな毎日が始まる。
そう思っていた。

でも透子は、毎日海に一人で行ってはぼーっと眺めている。
あまり幸せには見えなかった。

なんとなく何を考えているかは分かった。
おそらく、今両親はどうしているだろうとか、俺の負担になってはいないだろうかと考えているのだろう。

負担なわけがない。
何度そう告げても、透子は"ありがとう"と言いつつ悲しそうな顔をした。

何と言えばわかってくれるだろう。
何と言えば心から幸せだと思ってくれるのだろう。

俺はわからないまま毎日を過ごしていた。
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