青に溺れる
エピローグ
俺はスーツを着て花束を抱えて、階段をのぼる。
海辺では気持ちのよい気候だったのに、山は少し肌寒い。
久しぶりに海を見て、あのときのことを思い出した。
まるで昨日のことのように鮮明に思い出される。
俺はふっと笑う。
目的地付近に来ると人影が見えた。
俺が一番かと思いきや、先客がいるようだ。
「久しぶりだね」
俺がそう声をかけると、つぶっていた目を開けて彼女はこちらをむいた。
「拓海くん」
1年前はショートカットだった髪も、いまは肩くらいまで伸びて女の子らしくなっている。
「来てくれてありがとう。透子も喜ぶよ」
「私は家から近いから、時々こうやって透子ちゃんに会いにきてるの」
「七海ちゃんはもう高校2年生だっけ」
「うん」
もう透子が亡くなって1年が経っていた。
月日が流れるのは早いものだなと改めて思う。
俺は持ってきた花束をお墓の前に置き、手を合わせる。
透子、もうあれから1年が経ったね。
俺は毎日、仕事も忙しくて充実してるよ。
あまり会いにこれなくてごめんな。
でも透子のことを、1日だって忘れたことなんてないよ。
また来月の月命日に会いに来るから、待ってて。
それで今日は、プレゼントを持ってきたから置いて帰るな。
本当は直接渡したかったんだけど、間に合わなかったよ。
俺はプレゼントをズボンのポケットから取り出す。