青に溺れる
私には将来なりたい職業があった。

中学に入ってから数学が好きで、数学の先生になりたいと思っていた。

大学は理系にして、数学を専攻して教員免許をとる。
それが私の夢だった。

"透子ならなれるよ"

友達もクラスメイトも先生も、口を揃えてそう言ってくれた。

それからは一層、数学を勉強した。
受験勉強だって、全然辛くなかった。
大好きな数学を勉強できるんだから、むしろ楽しいといっても良かった。

でも運命は残酷だった。

大学受験まで半年を切った頃。
私は急に激しい腹痛に襲われた。

病院に運ばれた私が、医者に告げられたのはーーーー









「透子」

私は我にかえる。

「また浜辺にいたのか」

拓海くんは私の右隣に座る。

「ごめん」

拓海くんは私の右手を握る。
私の冷たかった手が、拓海くんの体温と同じになるくらい経ってから、拓海くんが口を開いた。

「寒くないか」

「うん」

私は海に顔を向けたまま答える。

「何を考えてるんだ」

私はどきりとする。

「何も考えてないよ。ただ海を眺めていただけ」

「嘘だ」

拓海くんは私の手を握る力を強くする。

「透子のことなら何でもわかるよ。嘘をつくときどんな癖があるかもわかってる。昔からずっと、一緒にいるんだから」

拓海くんは何でもお見通しだ。

小学生のとき、いじめられていた私に一番に気づいたのは拓海くんだった。
私が体調が悪いことに一番に気づくのも、拓海くんだった。

今回のこともそうだった。

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