青に溺れる
いつもの朝だった。
ただ今日はいつもより早い。

目覚ましが鳴る前に起き、スイッチを切る。
隣で寝ている拓海くんを起こさないようにと、そっと布団から起き上がる。

身支度を整えたあと、私は朝食の準備にとりかかる。

拓海くんが去年の誕生日にくれた、青色のエプロン。
料理をするときには必須アイテムになっていた。

向こうから拓海くんが寝返りを打つ、ふとんがこすれる音がした。
私はどきりとして後ろを振り向く。

まだ深い眠りの中のようだ。

今日の朝食はオムレツに野菜スープ、それにサラダ。
料理をしはじめた頃に、私が初めて作った朝食だった。

あのときは包丁で何度か指を切ったっけ。
その時のことは昨日のように思い出された。

初めて作ったオムレツは形が悪く、焦げが目立っていた。
野菜スープの具は大きく切りすぎて、スープは色が薄かった。

『ごめん、失敗しちゃった』

拓海くんは落ち込む私ににっこりと微笑み、

『いただきます』

と言ってもくもくと食べ始めた。

『形は悪いけど美味しいよ』

拓海くんの言葉を聞いて、私はもっと上手くなりたいと思った。
こんな焦げたオムレツではなくて、黄色い綺麗な形をした、赤いケチャップが映えるようなオムレツを作れたら。

それからは必死に練習して、今では綺麗に作れるようになっている。
私はできた料理にラップをかけ、食卓の上に並べる。

美味しく食べてくれますように……。

そう願って、私はアパートの部屋を出た。
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