青に溺れる
今日の波は少し高く、まるで私の心を映し出しているかのように荒れていた。

曇っていて、空と海の境界が見えない。
もちろん浮いている船も、空を自由に飛び回る鳥もいない。

よりによって今日、美しい海が見られないなんて残念で仕方がなかった。

私は履いていたスニーカーと靴下を脱ぎ捨て、波打ち際へとゆっくり足を進める。

近づいては引いていく、素足に触れる海水の冷たさが直接伝わってくる。

この冷たさを感じることによって、私はまだ生きているという実感を持てた。

私は冷たい海へと一歩一歩、足を進めていく。
初めは足首くらいだった海水は、いつの間にか膝下まで迫っていた。

これでいい。
拓海くんに迷惑をかけるくらいなら。

拓海くんはまだ、未来がある。
これから幸せなことが待っているのだから。

涙が目からこぼれ落ち、海と一体化する。
このまま私の身体も、海の一部になれたらいいのに。
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