明日へ馳せる思い出のカケラ
第24話 東京マラソン
いつもの年であったならば、もう梅が満開に咲き誇る時期なのかも知れない。
ただ今年に限っては、どうやら少し状況が異なる様子だ。
たぶん冬が長かったせいなんだろうね。まだまだ厚手のジャケットが手放せないほどに寒い日が続いている。
そして東京マラソン当日の今日に至っても、それは例外じゃなかったんだ。
マラソンは冬の競技と呼べるくらいに、寒い環境下で適したスポーツなんだろう。
だけど寒過ぎるってなると、話は別なんだよね。
息が軽く上がり始めるくらいのウォーミングアップをしているのに、体が全然温まらない。それだけに、体から感じる気怠さは思いのほか強く感じられてしまうんだ。
厚い雲で覆われた空。まるで今にも冷たい雪を降らせるのではないか。
そう思ってしまうくらい、見上げた空は灰色に淀んでいた。
「天気予報は悪くなるなんて、言ってなかったはずなのにな」
俺はそうボヤキながらスタート位置へと進んでいく。
予報を告げたテレビアナウンサーに文句の一つでも吐き捨ててやりたい。そんな気持ちを抱きながらね。
ただスタート地点に集結する参加選手の多さを目にした俺は、そんな天気予報の些細なミスになんて構っていられなくなったんだ。
見渡す限りの人だかり。すし詰めの満員電車が永遠に広がっている様な奇妙な感覚。
そんな息苦しい嫌悪感を覚えながら、それでも俺は人混みを掻き分けて自分の立つべきスタート位置を目指し進んだ。
俺の目標は3時間半で完走すること。一般的な市民ランナーにしてみれば、それなりに早いほうなんだろう。
でもまぁそこは陸上経験者としての僅かなプライドもあるし、それに最近の練習成果でそれが決して不可能じゃないって思えていたからね。
諦めさえしなければ、きっと到達出来るであろうゴールタイム。
だから俺は自信を持って、目標タイム『3時間30分』と掲示されたプラカードの立つ場所に進み寄って行ったんだ。
ただスタート位置にたどり着いた俺は少し気が萎えてしまったんだ。
だって俺が位置する場所は、軽く見計っただけでも正規のスタート位置からは百メートル以上も離れているんだから。
「やっぱ日本の最高峰の市民レースともなると、レベルが高いんだろうな……」
俺は本気でそう思ってしまった。
俺の周囲にいる全ての選手達が、自分と同等かまたはそれ以上の実力を兼ね備えた者達なんだって、勘ぐってしまったんだよ。
ただ今年に限っては、どうやら少し状況が異なる様子だ。
たぶん冬が長かったせいなんだろうね。まだまだ厚手のジャケットが手放せないほどに寒い日が続いている。
そして東京マラソン当日の今日に至っても、それは例外じゃなかったんだ。
マラソンは冬の競技と呼べるくらいに、寒い環境下で適したスポーツなんだろう。
だけど寒過ぎるってなると、話は別なんだよね。
息が軽く上がり始めるくらいのウォーミングアップをしているのに、体が全然温まらない。それだけに、体から感じる気怠さは思いのほか強く感じられてしまうんだ。
厚い雲で覆われた空。まるで今にも冷たい雪を降らせるのではないか。
そう思ってしまうくらい、見上げた空は灰色に淀んでいた。
「天気予報は悪くなるなんて、言ってなかったはずなのにな」
俺はそうボヤキながらスタート位置へと進んでいく。
予報を告げたテレビアナウンサーに文句の一つでも吐き捨ててやりたい。そんな気持ちを抱きながらね。
ただスタート地点に集結する参加選手の多さを目にした俺は、そんな天気予報の些細なミスになんて構っていられなくなったんだ。
見渡す限りの人だかり。すし詰めの満員電車が永遠に広がっている様な奇妙な感覚。
そんな息苦しい嫌悪感を覚えながら、それでも俺は人混みを掻き分けて自分の立つべきスタート位置を目指し進んだ。
俺の目標は3時間半で完走すること。一般的な市民ランナーにしてみれば、それなりに早いほうなんだろう。
でもまぁそこは陸上経験者としての僅かなプライドもあるし、それに最近の練習成果でそれが決して不可能じゃないって思えていたからね。
諦めさえしなければ、きっと到達出来るであろうゴールタイム。
だから俺は自信を持って、目標タイム『3時間30分』と掲示されたプラカードの立つ場所に進み寄って行ったんだ。
ただスタート位置にたどり着いた俺は少し気が萎えてしまったんだ。
だって俺が位置する場所は、軽く見計っただけでも正規のスタート位置からは百メートル以上も離れているんだから。
「やっぱ日本の最高峰の市民レースともなると、レベルが高いんだろうな……」
俺は本気でそう思ってしまった。
俺の周囲にいる全ての選手達が、自分と同等かまたはそれ以上の実力を兼ね備えた者達なんだって、勘ぐってしまったんだよ。