明日へ馳せる思い出のカケラ
 たぶんそんな心の一体感は、運命的な偶然の一致でしか味わえないんだろう。
 きっと今を生きる全ての人たちの中でも、それを実感出来た者は稀なはずなんだ。

 その多くが何も気付けないままで生涯を終わらせて行く。
 願ったとしても容易には掴めない。ましてお金なんかじゃ手に入れられやしない。
 そんな神秘的とも言える心の一体感を俺に見出したからこそ、君は最後まで俺を【必要】だと言ってくれたんだ。そして俺も恐らくはそんな気持ちを分かっていたはずなんだよね。

 ただ俺はそんな掛け替えの無い大切な感覚を履き違えて捕えてしまった。
 失う怖さに身をすくませるあまりに、はじめからそれを受け入れたくないと抵抗してしまったんだ。
 俺が脆弱過ぎたせいで、最後の最後ってところで君に心を開ききれなかったんだよ。

 その結果として、俺は君をひどく傷付けてしまった。
 君が切実に願った約束を破り、かつ君が心から寄せていた俺への想いを踏みにじってしまったんだ。

 悔やんでも悔やみきれない。
 君っていう俺にとっての唯一の生きる目的を自ら手放し、そこにあるはずだった存在価値をも御座なりにしてしまった。
 本当は、本心では君以上に心の一体感を感じていたはずなのに、それなのに俺は自分勝手に怖気づいて、後ろ向きに否定し続けてしまったんだ。

 バカとしか言いようが無いよね。
 救いようの無いバカだよ。

 でもさ、本当にもう遅過ぎるんだけどさ、俺は今になってやっとその気持ちに正しく向き合える事が出来たんだよね。

 何もかもが手遅れになってしまった今になって悟った心。
 だけどバカ過ぎる俺にしてみたら、君との全ての出来事は、それを知り得る為の必然な成り行きだったのかも知れないんだよね。

 代償としてはあまりにも大き過ぎるとしか思えない、掛け替えの無い君という存在。
 でもやっとそれを見つけ出せたからこそ、俺は今を生きて行こうと前向きになれたんだ。前を向く為の目的を定め、そこに向かう為の努力に身を費やせるようになったんだよ。
 そんな俺に今更ながらなれたからこそ、君は夢の中で微笑んでくれたんだよね。
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