明日へ馳せる思い出のカケラ
どうして、どうして君がここにいるんだよ。
俺はそう自問自答を繰り返す。
ただその理由は言わずと知れた事なんだよね。
単に俺自身が混乱しただけで、一目見れば誰しもがそれを理解出来るものだったんだから。
その容姿からして、君も東京マラソンに参加していたんだね。
それもあのクリスマスイブにコンビニに訪れた、新しい彼氏と一緒にさ。
そして俺の背中に走り続ける嫌悪感の正体も同時に把握したんだよ。
だってさ、今そこで倒れているのは、まさにその彼氏なんだから。
「済みません、ちょっとどいて下さい!」
俺はそこに集まっているだけのボランティアスタッフを押し退けて進み出る。
自分が何をしているのか。もう俺には冷静に考えている余裕はなかった。ただ体が勝手に動いてしまったんだよ。
君の前だから格好付けたかったのか。
いや、そんな心疾しい気持ちなんて持ち合わせるわけがない。
だって本当なら君の前に姿を見せること自体、俺には気恥ずかしくて耐えられなかったはずだからね。
でもそんな俺の些細な心情なんて、今は気にしてなんかいられないんだ。一刻を争う事態が、すぐそこで起きているんだから。
比較的年配の人が多かったからなのか。ボランティア達の取り乱し方は常軌を逸していた。見るに堪えない程に落ち着きを失っていたんだ。
でもそれは仕方ない事なんだろう。
だってこれだけ周囲が騒がしくなっているのに、救護スタッフが駆け付ける気配がまるでないんだからね。
だけど俺はそんな慌てふためくボランティア達を垣間見る事で、逆に決意したんだよ。
今、自分に出来る最大限の事をしようって。
それは決して君の姿を見たからじゃない。
君の悲しむ顔を見たからでもない。
自分ならば倒れている彼を救えるかもしれない。単純にそう思ったからなんだ。
誕生日を目前に控えた俺は、運転免許の更新をしたばかりだった。
その時にビデオで見た人命救助の方法を良く覚えていたんだ。
皮肉なモンだけどさ、かつて彼女の命を救った記憶を思い返しながら、俺は食い入る様にして人命救助のビデオを見ていたんだよね。だから俺には自信が持てたんだ。
根拠なんて無かったけど、でも彼を救えるのは自分しかいないのだと、純粋にそう思ったんだよ。
俺はそう自問自答を繰り返す。
ただその理由は言わずと知れた事なんだよね。
単に俺自身が混乱しただけで、一目見れば誰しもがそれを理解出来るものだったんだから。
その容姿からして、君も東京マラソンに参加していたんだね。
それもあのクリスマスイブにコンビニに訪れた、新しい彼氏と一緒にさ。
そして俺の背中に走り続ける嫌悪感の正体も同時に把握したんだよ。
だってさ、今そこで倒れているのは、まさにその彼氏なんだから。
「済みません、ちょっとどいて下さい!」
俺はそこに集まっているだけのボランティアスタッフを押し退けて進み出る。
自分が何をしているのか。もう俺には冷静に考えている余裕はなかった。ただ体が勝手に動いてしまったんだよ。
君の前だから格好付けたかったのか。
いや、そんな心疾しい気持ちなんて持ち合わせるわけがない。
だって本当なら君の前に姿を見せること自体、俺には気恥ずかしくて耐えられなかったはずだからね。
でもそんな俺の些細な心情なんて、今は気にしてなんかいられないんだ。一刻を争う事態が、すぐそこで起きているんだから。
比較的年配の人が多かったからなのか。ボランティア達の取り乱し方は常軌を逸していた。見るに堪えない程に落ち着きを失っていたんだ。
でもそれは仕方ない事なんだろう。
だってこれだけ周囲が騒がしくなっているのに、救護スタッフが駆け付ける気配がまるでないんだからね。
だけど俺はそんな慌てふためくボランティア達を垣間見る事で、逆に決意したんだよ。
今、自分に出来る最大限の事をしようって。
それは決して君の姿を見たからじゃない。
君の悲しむ顔を見たからでもない。
自分ならば倒れている彼を救えるかもしれない。単純にそう思ったからなんだ。
誕生日を目前に控えた俺は、運転免許の更新をしたばかりだった。
その時にビデオで見た人命救助の方法を良く覚えていたんだ。
皮肉なモンだけどさ、かつて彼女の命を救った記憶を思い返しながら、俺は食い入る様にして人命救助のビデオを見ていたんだよね。だから俺には自信が持てたんだ。
根拠なんて無かったけど、でも彼を救えるのは自分しかいないのだと、純粋にそう思ったんだよ。