明日へ馳せる思い出のカケラ
 想像を絶するほどの険しい道のりに臨まなければ辿り着けない場所。
 それが医療に従事する者達なんだろう。

 でもだからこそ、そんな目標を目指す事で自分を強く成長させられる、脆弱過ぎる自分を変えられるって思えるんだ。そしてそんな想いを曲げる事が、俺にはもう出来ないんだよ。

 君は走り続けていてくれた。
 それが何よりも嬉しかった。

 恐らく絶望の中に自分を支える希望を見つける事が出来た。それが君にとって走る事なんだろう。
 そしてそれと同じ様に、俺は人を助ける仕事を目指す事で前向きに生きて行く。そう心に誓ったんだよね。

 そんな新しい決意をいつまでも胸に抱いていられたなら、俺にもまたいつの日か、誰かに想いを伝えられる日が来るのかなぁ。
 またかつて君との間に芽生えたほどの恋をすることが、俺にも出来るのかなぁ。

 それを考えると正直怖い気もするよ。
 でもね、もしこれから先、君じゃない誰かを好きになったとしても、目標を見失わず前に進んでいられたなら、その時は頑張れる気がするんだ。
 ううん、絶対に投げ出したりはしないよ。
 だって君も俺の幸せを、心から願ってくれているだろうからね。
 その想いを裏切るわけにはいなかいだろ!


 燦々と輝く太陽の下、俺はゴールに向かって走り続ける。
 まるで天気までもが、新しい生きる目的を見つけ出した俺を祝福してくれているかの様だ。

 俺はそんな晴れ渡った空を眺めながら、思い出のカケラを心の奥へと仕舞い込む。
 希望へと繋がる明日に、胸を焦すほどの熱い想いを馳せながら――。
 


                     おわり
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