ディスペア
(5)~君を裏切らない~
「……………ねぇ。」
私は、覚悟を決めて声をかけた。
「ん?なぁに?」
うつむく私に、彼は優しくささやいた。
だから私は、安心して少し話しやすくなった。
「あのさ、私ね………前、母を………」
彼は一瞬表情が凍りついたあと、私の言葉を遮った。
「ねぇ、パフェ食べに行かない?」
ひきつった笑顔でそう聞かれた。
ねぇ、今確かに遮ったよね……?
どうして?
それから彼と何を話したか私はおぼえていない。
まだ5時なのに真っ暗な冬の空の下。
このまま、不安な気持ちで家に帰りたくない。
もう一度、話してみよう。
「じゃあ、ここで。」
「待って。」
彼は困った顔をして、こっちを向いた。
まるで私に『言わないで』といっているようだった。
でも、もう引けない。
「私………自分の母親のこと、こ………」
「だめっ!!」
殺した。
その言葉は闇の中に消えた。
「言わないでっ!お願いだから!!」
なんで?
なんで話しちゃだめなの?
「………ごめんね……」
彼の口から出たのは、謝罪の言葉だった。
「僕は最初から君を裏切ってたんだ。」
私は、自分の耳を疑った。
彼は、言葉を続ける。
「僕のお父さんは刑事なんだ。」
嫌な予感がした。
「まわりはみんな事故だって言ってたけど、お父さんは君のことを疑ってたんだ。」
もうこの続きは言わなくてもわかった。
でも、言われたくない。
言わないでっ!
そんな望みは叶わない。
「だから、証拠を見つけるために、僕は君に会いに行ったんだ。」
彼は、今まで見たことのない目でそういった。
私の背筋が凍る。
じゃあ、全部嘘だったの?
私を包み込んでくれた優しさも?
あの笑顔も?
裏切らないって言ってくれた、君の瞳も?
「本当は初めて会ったときに、君が殺したってわかったんだ。」
「だって麻彩の目は、闇に飲まれていたから。」
!!!
気づいてたんだ………あの日から。
「でも空っぽな君を僕はどうしても放っておけなかったんだ。」
あ、なんだ……
彼は私を裏切ってなんていない。
だって、あの笑顔はきっと本物だったから。
「君と話すのは、とても楽しかった。ずっとこれが続けばいいと思った。」
本当に騙そうとしているなら彼はこんなことを言わない。
「でも僕はさっき君の母の事について、真実を知ってしまった。だから……」
「だから行かなくちゃ。」
彼が、言葉を詰まらせながら言った。
「今までありがとう!………ごめんね。」
「でも、世の中にはちゃんと良い人もいるから。」
そう言って寂しそうに笑った彼は、私に背中を向けた。
「人…………嫌いにならないでね。」
私は、覚悟を決めて声をかけた。
「ん?なぁに?」
うつむく私に、彼は優しくささやいた。
だから私は、安心して少し話しやすくなった。
「あのさ、私ね………前、母を………」
彼は一瞬表情が凍りついたあと、私の言葉を遮った。
「ねぇ、パフェ食べに行かない?」
ひきつった笑顔でそう聞かれた。
ねぇ、今確かに遮ったよね……?
どうして?
それから彼と何を話したか私はおぼえていない。
まだ5時なのに真っ暗な冬の空の下。
このまま、不安な気持ちで家に帰りたくない。
もう一度、話してみよう。
「じゃあ、ここで。」
「待って。」
彼は困った顔をして、こっちを向いた。
まるで私に『言わないで』といっているようだった。
でも、もう引けない。
「私………自分の母親のこと、こ………」
「だめっ!!」
殺した。
その言葉は闇の中に消えた。
「言わないでっ!お願いだから!!」
なんで?
なんで話しちゃだめなの?
「………ごめんね……」
彼の口から出たのは、謝罪の言葉だった。
「僕は最初から君を裏切ってたんだ。」
私は、自分の耳を疑った。
彼は、言葉を続ける。
「僕のお父さんは刑事なんだ。」
嫌な予感がした。
「まわりはみんな事故だって言ってたけど、お父さんは君のことを疑ってたんだ。」
もうこの続きは言わなくてもわかった。
でも、言われたくない。
言わないでっ!
そんな望みは叶わない。
「だから、証拠を見つけるために、僕は君に会いに行ったんだ。」
彼は、今まで見たことのない目でそういった。
私の背筋が凍る。
じゃあ、全部嘘だったの?
私を包み込んでくれた優しさも?
あの笑顔も?
裏切らないって言ってくれた、君の瞳も?
「本当は初めて会ったときに、君が殺したってわかったんだ。」
「だって麻彩の目は、闇に飲まれていたから。」
!!!
気づいてたんだ………あの日から。
「でも空っぽな君を僕はどうしても放っておけなかったんだ。」
あ、なんだ……
彼は私を裏切ってなんていない。
だって、あの笑顔はきっと本物だったから。
「君と話すのは、とても楽しかった。ずっとこれが続けばいいと思った。」
本当に騙そうとしているなら彼はこんなことを言わない。
「でも僕はさっき君の母の事について、真実を知ってしまった。だから……」
「だから行かなくちゃ。」
彼が、言葉を詰まらせながら言った。
「今までありがとう!………ごめんね。」
「でも、世の中にはちゃんと良い人もいるから。」
そう言って寂しそうに笑った彼は、私に背中を向けた。
「人…………嫌いにならないでね。」