よく晴れた空に
炊事場に行くと、福がいた


スッと目を反らされた


「力使うの禁止だって、言ったろ」


沸き立ての湯で、俺にお茶を煎れてくれた

お茶を貰いに来たわけじゃない



福の横に座る



「握り飯作ってやろうか?」


「今日は、ご飯余ってません」


久しぶりの会話が、コレ




「山南さんに言えて、俺に言えないことって、なんだ?」



何も語ろうとしないから

総司から聞いたことを尋ねた


「思い出作るって、どういう事だ?」




ふぅーっと、一息して




「そのままですよ
ただ、皆との楽しい思い出が欲しかった
土方さんと恋仲でいるより
それを選んだんです…
この力は、兄を変えた
私は、兄のようにならないように
土方さんと夫婦になる、普通の生活を
諦めました…それだけです」




ニコッと笑って、「お休みなさい」



お辞儀をして、部屋に戻っていった



お福の煎れてくれたお茶が

旨くて


泣きそうになった







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