図書恋ーー返却期限なしの恋ーー
大人の初恋(うぶこい)
 雑誌の意見は正しかった。痛い、ものすごく。こんなことを何食わぬ顔で世の女性たちが受け入れてたなんて、オンナってすごい。頭がさがる。

「……大丈夫か?」
 大丈夫なわけない。頼むからそれ以上動かないで。
「きつそうだな」
 そう言う自分の方が、痛そうで辛そうで、苦しそう。いつもからかって笑ってるくせに。
 そんな顔されたら、これから続く痛みにも耐えられる気がしてしまった。

 大丈夫、とは言えないから、代わりに絡められていた指に力をこめた。もう片方の手で、哲のもっさりした髪をくしゃりとかき混ぜる。思ったより柔らかい。見ているだけだったものに触れた。触れることができた。そう思うと、こんな時なのに笑うことができた。

「あさこ」

 少し空いていた空間を埋めるように、哲が覆いかぶさる。痛い、やっぱり。死にそう。でも。
 ひとの体温は、温かいんだと知った。

 うれしかった。
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