有心論
優しそうなおばさんに案内され、施設内に入った。
『あたなはどうしてここで働きたいと思ったの?』
「俺は、生まれてすぐから施設で育ちました。親に捨てられたんだと思って、人が嫌いでした。ずっと誰にも心を開かず、孤独だったんです。だけど、ある人と出逢って俺は変わりました。」
『ある人?』
「俺が生まれて初めて好きになった彼女です。」
『彼女なのね。』
「はい。俺は彼女のおかげで人の暖かさを知りました。もう孤独なんて感じてません。それで思ったんです。俺みたいに人に心を閉ざしている子供たちの力になりたいって。」
『そうだったの。私は大歓迎よ。』
「俺、ここで働かせてもらえるんですか?」
『そうよ。まずはバイトとしてだけどね。バイトしながら勉強して保育士の免許取ってもらいたいんだけど、いいかしら?』
「ありがとうございます!!俺、頑張ります!!」
『あら、頼もしいわね。いつから来られる?』
「今の仕事の関係もあるので二週間後でもいいですか?」
『いいわよ。それと、最後になったんだけどまだ名前聞いてなかったわね。』
「そうでしたね。俺は原田智弥です。」
『原田くんね。私は山岸です。よろしくね。』
「よろしくお願いします!」
『じゃあ、二週間にまたね。』
「はい。失礼します。」